WIRED(ワイアード) Vol.54 (発売日2024年09月26日)

2024年9月26日発売 / コンデナスト・ジャパン
紙版 : ¥1300

Vol.54 (発売日2024年09月26日) 内容紹介

The Regenerative City
未来の都市は、何を再生するのか

今後、都市への人口集中はますます進み、2050年には、世界人口の約70%が都市で暮らしていると予想されている。「都市の未来」を考えることは、つまり「わたしたちの暮らしの未来」を考えることと同義なのだ。だからこそ、都市が直面する課題──気候変動に伴う災害の激甚化や文化の喪失、貧困や格差──に「いまこそ」向き合う必要がある。そして、課題に立ち向かうために重要なのが、自然本来の生成力を生かして都市を再生する「リジェネラティブ」 の視点だと『WIRED』日本版は考える。「100年に一度」とも称される大規模再開発が進む東京で、次代の「リジェネラティブ・シティ」の姿を描き出す、総力特集。

EDITOR’S LETTER
未来は都市にある。ただし違うかたちで

WIRED WHITE LIST
イノベーションとアイデアのありか

SPECIAL FEATURE
The Regenerative City
未来の都市は、何を再生するのか

Who Will Design the Next-Gen City?
リジェネラティブな都市への萌芽

都市に「完成」はなく、常に変化し続けるものだ。だからこそ、「リジェネラティブ」な都市への兆しは、世界のどこかに出現しているはずだ。その萌芽を見つけるために、『WIRED』日本版は都市体験のデザインスタジオfor Citiesとコラボレーションし、調査を実施。土着の素材や工法の活用から、単なる緑化にとどまらない生態系の構築まで──「未来が(すでに)訪れている場所」に、これからの都市と建築のヒントを学ぶ。

COMIC
リジェネラティブ特区

佐々木充彦

東京都の大規模な都市開発が2040年にいち段落した。そこからさらに20年。生物多様性を回復する「ネイチャーポジティブ」達成がいまや世界で義務化され、東京は再自然化した湾岸部と都内に点在する緑地をネットワークでつないだ「リジェネラティブ特区」がつくられた。

Imagineering and Engineering
民主主義は都市の未来をいかにひらくか?

オードリー・タン × 安野貴博

経済的論理が優先されがちな都市開発に、デジタル民主主義のプロセスを生かすことはできるだろうか。7月の東京都知事選に出馬したAIエンジニアでSF作家の安野貴博と、台湾の元デジタル発展省大臣で天才プログラマーのオードリー・タンが、リジェネラティブな都市の未来について語った。

Back to the Regenerative Future
理想郷に続く「帰り道」

石井 裕/石川伸一/石山アンジュ/内沼晋太郎 大塚桃奈/大村高広/岡 碧幸/小川絵美子
落合渉悟/川地真史/コムギ/佐久間裕美子 諏訪綾子/宅間頼子/立石従寛/田中浩也
出村光世/tomad/永田暁彦/林 篤志 藤倉麻子/安岡美佳

リジェネラティブ・シティへの転換に向けて、「魅力的な都市の定義」や「都市が抱える課題」も整理したい。ならば、東京を離れることや二拠点生活を決意した人物に、「東京がどんな都市になれば再び戻ってきたいか」を尋ねるのがいいのでは……? というわけで、22の率直な意見を一挙紹介!

Revolt Against the New
都市の“新しさ”に反抗せよ

田根 剛

「場所の記憶」をテーマに、過去と未来をつなげる建築をつくり続ける田根剛は、自身のアトリエのあるパリの街並みが大変貌を遂げていくのを横目に、各地で再開発が進み、記憶が更地へとなっていく東京の姿を憂いている。カミュの“反抗的人間”に倣って都市に住む一人ひとりがいま抵抗する方法、そして、その先にある都市の未来にこれからの建築家が果たせる役割について訊いた。

Showering the Cities and Beyond
気鋭の建築家たちに訊く
リジェネラティブな変化に必要なものはなんですか?

teco/GROUP/ADX/ULTRA STUDIO/KASA/ARA

思い描く未来につながる都市やまち、社会をデザインし、その実装に踏み出す建築家たち。彼女/彼らはいま何を見据え、何に挑戦をしているのか? 3つの質問を投げかけた。

Tokyo as It Could Have Been
“緑化都市”になり損ねた街
「東京の都市計画」135年の系譜から見えてくること

飯田晶子/山崎嵩拓

日本で初めて近代都市計画が立案されたのが明治22年(1889年)。以来、時の政府や有識者、あるいは都市計画家たちは、「東京の未来」をどうイメージしてきたのか。とりわけ「都市の緑地(≒生態系)」という観点は、時代ごとにどのように取り扱われてきたのか。「実現しなかったプラン」を眺めることで、ありえたかもしれない東京の姿を浮かび上がらせる。

Ecological Planning
人間が「自然に適応する」計画の源流

松田法子

50年以上前から脈々と受け継がれてきた「エコロジカル・プランニング」の思想は、都市や建築の「リジェネラティブ・デザイン」にどのような影響を与えうるのか。WIRED.jpでも連載『人と地球の共構築に向けて』を担当する、建築史・都市史が専門の松田法子(京都府立大学准教授)が解題する。

生江史伸シェフが編集する
Regenerative Restaurant
再生へのフルコース

食料自給率ほぼゼロの東京は、リジェネラティブ・シティになれるのか? 三つ星レストラン「レフェルヴェソンス」のエグゼクティブシェフ・生江史伸の腕にかかれば、一皿のなかに、誰もが確かな未来図を見るだろう。芳醇なる都市と自然のマリアージュの裏側へ。

Species of the City
エコトーンとしての東京の“ワイルドライフ”

舩橋真俊

水と陸、草原と森など異なる環境が連続する領域であるエコトーンは、生物多様性のゆりかごだ。都市がもしリジェネレイトする可能性をもつならば、街そのものがエコトーンになるのではないか? 拡張生態系やSynecoculture™(協生農法)の研究と実践を行なうソニーコンピュータサイエンス研究所の舩橋真俊とともに、東京の野生と生物種について考える。

Culture-Led Urban Regeneration
文化的エコシステムを生み出す、都市開発の流儀

内田まほろ/武田悠太/佐々木秀彦

「100年に一度」とも言われる大規模開発が進む東京の中心部。新たに誕生するビル群にミュージアムやギャラリーが組み込まれるケースが多いが、都市開発により「文化施設」が増えることと、都市に文化が根付くことは同義ではないはずだ。では、次世代の文化を再生成し続ける都市の姿とはいかなるものか。3人のプレイヤーの実践から見えてくる、その現在地。

A New Lens for the City
“都市の複雑性”を理解するためのパラメーター

鈴木綜真

都市開発において、見過ごされてきた価値とは何だろう?文化的な雰囲気、なんとなく心地よく感じる路地、複雑な生態系ネットワーク……これらの価値を示すことで、リジェネラティブな都市開発が現実のものとなるかもしれない。都市研究家/Spatial Pleasure代表の鈴木綜真と“都市の複雑性”を理解するための4つのパラメーターを考えた。



Redrawing the Future of Cities
多元的な都市の未来へと誘うブックガイド

正田智樹/鎌田安里紗/新保奈穂美/平田晃久/能作文徳
九段理江/岡部明子/南部隆一/廣田ふみ/吉村有司/内田友紀

画一的なマスタープランから、地域の固有性や土着性が反映された都市開発にシフトするために、「多元的(Pluralistic)」というキーワードを導入したい。ひとつの普遍的な世界から、多元的な世界へと人々の認識が変わるとき、都市の未来像もおのずと変わっていくはずだ。多分野のビジョナリーと編集部が選んだ、都市の未来を想像するためのブックガイド。

AS a TOOL・CASE STUDY
A House for Wholeness
植木鉢のような家と建築家と衣服

武田清明

人だけでなく他生物を受け入れる家がある。屋上、バルコニー、そして柱の中にも土を敷き詰め、雨水は地下まで染み入り、周辺の環境とゆるやかな生態系を育んでいる。鶴岡邸。設計者の建築家・武田清明のアトリエでもある循環の空間は、いかなる衣服と響き合うのか。

NEW TRUST, NEW SOCIAL CONTRACT
水野祐が考える新しい社会契約
〔あるいはそれに代わる何か〕
第19回 リジェネラティブな都市と「創造的再利用」

法律や契約とは一見、何の関係もないように思える個別の事象から「社会契約」あるいはそのオルタナティブを思索する、法律家・水野祐による連載。今回は、廃棄物と捉えられてきたモノを新しい手法により再利用可能な資源として捉える「クリエイティブリユース」を取り巻くルールを考察。

DON’T LOOK BACK IN
なみちえのドライブ進化考 VOL. 06

まさにいま、モビリティは進化中。アーティストのなみちえが、クルマと暮らしの新しい関係を、ドライブしながら考える連載。クルマはボルボの新時代を象徴するBEV。なみちえは渡欧中。

Way Passed Future
川田十夢の「とっくの未来」
第31回 文字から読み解くテクノロジー

文学が記述した「ジャンル分けされる前の未来」の痕跡を見いだし「いま」と接続することで、文学とテクノロジーを新たなパースペクティブで捉える本連載。前回は「円安」が起点だったが、今回は「円高」。自分の一生を超えた時間のスケールが落とす影に思いを馳せるべく、ラヴクラフトを引く。

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